「取りあえず、スキャンしたので公開する」
「1877年~1979年の子供トーノ版新宇宙戦艦ヤマトの鉛筆描きコミック全部だ」
「解説してくれ」
「ヤマト1974の続編を子供が勝手に考えたものだと思ってくれ。1巻と2巻が存在する。書かれた日付からすると1巻は1977年。2巻は1979年だ」
「その日付に何か意味があるの?」
「ある。1977年はさらば宇宙戦艦ヤマトより前。1979年はさらば宇宙戦艦ヤマト/2より後だ」
「それに意味があるの?」
「ある。1巻は真面目に続編を作ろうとしているが、2巻はギャグになっていてテイストがまるで違う」
「どうして?」
「さらば宇宙戦艦ヤマト後であればもう続編を自分で考える意味がなかったからだろう」
「君一人?」
「いや、最初の方のガミラス艦、ガミラス機はH君の作画と思われる。立体感がなく側面から見た平面的で線が太い絵はH君の作画。しかし、16pのワープアウトするガミラス艦が最後の彼の作画だろうと思う。17pのデスラー砲を発射するガミラス艦の艦首は明らかに自分の絵」
「じゃあ中身について聞こう」
「まず、14pでブラックタイガー2機に挟まれてコスモゼロが曳航される描写は、ガミラス機を捕虜にしたエピソードの牽引方法にちなんだものだろう」
「他には?」
「15pの宇宙ステーションにさりげなく宇宙戦艦ヤマトが停泊している。要するに現役で活躍していて当たり前という前提で描かれている」
「それにどんな意味があるんだ?」
「現役ではなかったさらば宇宙戦艦ヤマトで、そこはガッカリした。でも、ヤマト2では現役だったので少し納得した」
「復興期の地球にヤマトを遊ばせておくゆとりなんかあるわけないという考えなんだね」
「ガミラスの奇襲を受けてヤマトは撃破される。19、20pでヤマトは不時着水する。これが見開きの大ゴマ。この時点で見開きの大ゴマを使いこなしている。それから、着水の衝撃でカタパルト上のコスモゼロが放り出されている描写が秀逸だな」
「ふむふむ」
「22pでヤマトは完全に沈んでいるが手前で海底に突き刺さっているコスモゼロがいい味を出している。絵に奥行きがあるし、生々しい」
「それから?」
「23pで小マゼランにニューガミラスという設定が紹介される。ガミラスは滅んでいないという解釈だ。まあ当然だ。本星が破壊されても、どう考えても無数の植民星にいっぱい人はいたはずだ」
「それから?」
「24pから遊星αが出現する。ここから妖星ゴラス風の展開になっていく」
「30pからキャラが出てくるね」
「地球軍司令官、佐渡造酒、海進、新代大介。佐渡以外は似てないが別人設定だからいいだろう」
「他には?」
「『わしがいく』『いけいけ』というやり取りは松本零士風」
「それから?」
「エレベーターで第1艦橋で上がるのはヤマト1974第2話風。しかし、海底で地面が左右に開いて、自由になったヤマトが水中を浮上していくのは新しい。ここはさらば宇宙戦艦ヤマトとは違うオリジナリティのある流れ」
「40~41pは見開き大ゴマだね」
「ここは海面に飛び出すヤマト。見せ方がさらば宇宙戦艦ヤマトとは違っている。甲板が見える形で斜めからのカットになっている」
「でも42pでは斜め下から見るアングルに変化しているね」
「地面のレベルにいる人から見ると、下から見上げる感じになるということだろう。考えたか直感で描いたかどうか分からないが、小学生ながらそこまでやっていた」
「技術は足りないね」
「そう。技術はまるで足りていない。しかし、発想、センスに見るべきところは多かった」
「こまでが1巻だね」
「昭和52(1977)年11月9日美野川出版」
「昭和52(1977)年11月9日という日付に意味があると思うかい?」
「ある。実は1977年夏にヤマト1977が公開され映画パンフが買えた。9月になるとロマンアルバム宇宙戦艦ヤマトが出た。つまり、静止画でヤマトを描くための参考資料が爆発的に増えた時期だ」
「なるほど。それで、美野川出版とは?」
「父がやっていた鉄道模型の架空鉄道会社美野川鉄道から来た架空出版社だろう」
「では次は2巻だ」
「2巻は全くテイストが変わってしまうので分けて解説しよう」